変わる企業選びの条件 〜採用と給与〜
先⽇、2023年春に⼤学卒業予定者の就職内定率がニュースになっていました。
新卒採⽤者に関しては、⼤⼿有名企業が新卒初任給を⼤幅に引き上げるという話題も度々⽿にします。⻑年⼈材に関わる仕事をしていますが、初任給は緩やかな上昇傾向はあるものの20万円前後のほぼ横ばいといった状況でした。ところが、最近の初任給引き上げは、「緩やかな」という表現では⾜りない「劇的な」引き上げが増えています。
NTTグループは⼤卒初任給21万9000円から25万円(専⾨性が⾼い⼈材は27万2000円)に、バンダイ株式会社は22万4000円から29万円に、というように10%以上の引き上げ例も…。
背景にあるのは、やはり⼈材獲得の問題です。⼈材獲得が難しくなってきているのは何も新卒採⽤に限りません。そのため、給与引き上げの問題は中途採⽤の現場にも影響が出てきています。
そこで今回は「給与と採⽤」をテーマに、採⽤の現状とこれからの対応について考えてみたいと思います。
⼈を集める必須条件は給与の引き上げ︖
求⼈広告を出すと、広告の営業担当から⾊々アドバイスをもらいますが、今1番に⾔われることは何だと思いますか。
答えは、「⼈を集めたければ、まず給与を上げてください」です。
内定を受諾するかどうかという段階の話ではありません。給与をあげなければ、求⼈が求職者の⽬に留まらなくなっているのです。この状況は⼈材紹介の場合でも共通しています。
企業様から求⼈案件をいただいても、条件に合った求職者をどれだけ紹介できるだろうかと考えます。1、2年前は⼤抵の求⼈にまずはエントリーしてみようという求職者がおり、⺟数が集まる状況でした。それが今年は、年収を少し引き上げたとしても、基本給の訴求が弱いと応募者が集まりづらくなってきています。
総合的に⾒た年収が決して低いわけではなくても、基本給をグッと引き上げている求⼈に負けてしまうのです。これは中⼩企業に限った話ではなく、⼤⼿企業でも同じです。以前から、⼤⼿企業に⽐べて、中⼩企業の採⽤活動は⼈が集まりにくい状況が続いていました。それが今では基本給という求職者のフィルターが登場したことで、中⼩企業の採⽤は危機的なほど難しくなっているように感じます。
企業選びの決め⼿は…
私も⽣活するためにお⾦が必要で、そのために給与が⼤事なことは理解しています。
ただ近頃は、企業選びにおけるお⾦に関する条件の⽐重が、他の条件よりも上がってきているように感じます。最近弊社に中途⼊社した社員に決め⼿を聞いたところ、やはり、基本給が⾼かったからとの回答でした。独⾃の社⾵や⽂化、社員のために⽤意している福利厚⽣、研修制度も、⾼い基本給には敵わないのです。
「⾼齢化が進んでいる」「若い⼈の採⽤は難しくなっている」と頭では理解していても、そこまでの実感はありませんでした。ですが、今、この状況を⽬の当たりにして、⾼齢化と⼈材不⾜が急速に進んでいるのを強く感じています。
そして⼀部の企業はこの状況を打開するために、初任給の⼤幅な引き上げという策を取ったのでしょう。個⼈的に、働く上で何が重要かを考えると、最低限の⽣活ができる給与と頑張れば正しく昇給・昇進し、会社が社員のために⾊々企画してくれる環境があればと思いますが、今は企業選びの在り⽅が変わってきているのだとも感じます。その「企業選びの在り⽅」と「初任給の引き上げという策」が上⼿く重なったのが、今の採⽤戦線なのかもしれません。
給与でしか⼈は集まらないのか?
このような状況は採⽤・⼈事を担当する⽅にとっては⾟い状況ではないでしょうか。
正直に⾔うと、⼈材紹介という仕事をしている側にとっては先が読めず⾟い状況です。
実際のところ、求職者がいないわけではありません。ただ、その求職者のエントリーが基本給の⾼い求⼈に偏っており、応募の集まらない企業様が出てきているのです。しかし多くの企業様にとって、基本給を上げることは簡単ではないでしょう。初任の給与をあげれば、すでに⾃社で頑張ってくれている社員の給与との格差も⽣じます。
そのバランスを整えるためには⼈事制度の改⾰も必要です。⼀朝⼀⼣で解決できる問題ではなく、⼈事・採⽤担当者だけで対応できるものでもありません。
そう考えると、⼈事・採⽤担当の⽅や弊社のような⼈材紹介企業にまずできることは、給与に勝るアピールポイントを作っていくことなのではないかと思います。
残念ながら上⼿くいく保証もないですし、今の求職者が給与以上に訴求されることが何なのか答えは⾒つかっていません。
それでも今は、試⾏錯誤を繰り返し、少しでもヒット率の⾼いアピールを仕掛けていくしかないのではないかと思っています。
from フミちゃん
ゼネラルマネージャーの西田二三代です。業界30年以上の知見から、企業の人事担当者様に離職率の低減、面接の印象を良くするなどの役立つ情報をブログという形でお伝えします。
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