パワハラ問題とコミュニケーション
「ハラスメント」—この言葉は人事や労務を担っていると、避けては通れないものではないでしょうか。
最近でも、韓国の女性DJやジャニーズ事務所、ビッグモーター社など、セクハラやパワハラといったハラスメント問題が話題となっています。
かつてはテレビの報道でたまに見聞きする程度に感じられていた問題でしたが、今や身近で起こりうる労働問題となってきているように感じます。
実際、ある企業様で男性上司が人材紹介で入社した若い女性社員にセクハラを行い、その女性社員が弁護士を通じて謝罪を求めているというお話を伺いました。
そこで今回は、「ハラスメント」をテーマに、社内でのコミュニケーションについて考えてみたいと思います。
「そういうつもりはなかった」のにハラスメントが起きている
ハラスメントは多くの場合、不適切なコミュニケーションから生じるものです。
一般的に、セクハラは性に関する不適切な言動や接触、パワハラは権力を乱用する形でのいじめや嫌がらせとされます。
しかし、パワハラやセクハラが社内で問題になったときに、問題解決に当たる担当者がハラスメント当事者に話を聞くと、「そういうつもりはなかった」という答えがよく返ってくるのだそうです。
実際の言動や行為がハラスメントだったかどうかは別として、「そういうつもりはなかった」のにハラスメント問題が起こるのは何故でしょうか。
私は、多くの場合、言動を発する側・行為を起こす側、つまりコミュニケーションの担い手側が、気付かずに相手を不快にすることをしてしまっている可能性があるからではないかと思います。
例えば、悪気なく「頑張ってね」と軽く肩に触れることでも、相手がそれを嫌だ、不快だと感じれば、ハラスメントの問題となる可能性があるのです。
私自身、パワハラについては特に気にかかっています。部下を叱責する場面で、「私の指導はパワハラに当たらないだろうか?」という不安がよく頭をよぎります。男性上司から女性部下へのハラスメントだけでなく、女性上司から男性部下へ、あるいは同性同士や部下から上司へなど、どのような立場・状況でも起こり得ることです。
そのため、私としては、セクハラやパワハラのようなコミュニケーションに連なるハラスメントを防ぐには、コミュニケーションの担い手側の努力が不可欠だと思っています。
ハラスメント防止の土台は信頼関係
では、「そういうつもりはなかった」行為や言動なのに、コミュニケーションの受け手側は、どうしてそれをハラスメントだと受け取るのでしょうか。
今回は、パワハラに絞って考えてみたいと思います。
明らかな暴言や人格否定は言語道断ですが、単なる注意や指導でも相手がそれをパワハラだと受け取ることがあります。
この原因の多くは、コミュニケーションの受け手との関係性に距離がある状態で、突如としていつもと違うコミュニケーションが取られるからではないかと思っています。注意や指導は、気軽な雑談とは異なるものです。
関係性が十分に築かれていない場合、突然の厳しい物言いや強い注意は、相手がショックを受ける可能性が高くなります。そういう対応を行う場合、その前提となる信頼の構築が必要です。
例えば、上司と部下の場合、日常的なコミュニケーションを大切にして、コミュニケーションの裏にある意図を感じ取れ、その意図を信じ合える関係性をつくることです。そうすれば、部下は、上司が自身の成長を願っており、そのために様々な助言をしていることを感じ取り、上司の言動の裏にある意図を理解してコミュニケーションに臨めるようになります。
その積み重ねが、厳しい指導を行ったとしても、パワハラと受け止められるリスクを下げることにつながるのではないでしょうか。
会社だけの問題でも個人だけの問題でもないハラスメント
ハラスメント問題は、人事労務の担当者だけでなく、全社員に関わる問題です。
ハラスメントの一因となるコミュニケーションは難しいものであり、私自身も常に反省しながら日々を過ごしています。
ハラスメント行為が起こってしまうと、被害者となった方のその後の人生に大きな影響を与える可能性もあります。
会社全体でハラスメント問題に取り組むことが、社員ひとりひとりにとってより働きやすい環境につながることは間違いありません。
とは言え、人と人との問題は、個人で向き合う場面もあり、常に難しさを伴うものです。日ごろの会話や関係構築を通して解決できることもありますが、そう簡単にはいかないこともあるでしょう。
私自身、毎日反省の繰り返しですが、その中で少しずつでも信頼される関係性を築いていけたら良いなと思っています。
from フミちゃん
ゼネラルマネージャーの西田二三代です。業界30年以上の知見から、企業の人事担当者様に離職率の低減、面接の印象を良くするなどの役立つ情報をブログという形でお伝えします。
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